いよいよ会計年度任用職員に関する制度設計が大詰めとなりましたが、まだまだ私の自治体では労使交渉がまとまっていません。
まとまっていないどころか、ぶっちゃけ紛糾しています。
なぜか?
労使交渉でこれまで当局(総務部・人事課)と積み上げてきた会計年度任用職員の1日当たりの勤務時間について、
会計年度任用職員の1日あたりの勤務時間の上限を「7時間」としたのです。
上限が7時間ですよ?
この上限設定を労使交渉を経ないで、一方的に決められたのも問題なのですが、そもそも論として
という点について述べたいと思います。
会計年度任用職員に退職手当を出さないようにする7時間問題とは?
会計年度任用職員は、1日の勤務時間が8時間に達しているかどうかで、待遇が大きく変わります。
フルタイム会計年度任用職員 | 勤務時間8時間 |
パートタイム会計年度任用職員 | 勤務時間8時間未満 |
フルタイムとパートタイムというのは、非常に大きな差がありますが、特に大きな待遇面の違いというのは「退職手当」が出るか出ないか、という点です。
実際、総務省が作成した「会計年度任用職員制度の導入等に向けた事務処理マニュアルの改訂について(通知)」においても、パートタイム会計年度任用職員は退職手当を支給することを想定していません。
今回の会計年度任用職員の導入は、あくまでも非正規公務員の待遇改善というのが大きなテーマです。
だからこそ、これまで退職手当がもらえなかったら臨時職員や非常勤特別職がフルタイム会計年度任用職員となれば、退職手当がもらえるというのは、改善です。
しかし、財政事情が厳しい当局は、退職手当を出したくないしたら、どうするか?
簡単ですね。
出来る限り会計年度任用職員はパートタイムに押しとどめておこうとします。
つまり、会計年度任用職員の1日当たりの勤務時間を7時間以内にして、絶対に8時間に達しないようにします。
これこそが、全国の自治体で問題となっている「7時間問題」です。
財政上の理由だけで会計年度任用職員の1日当たりの勤務時間の上限を7時間とするのは不適切
「でも、地方自治体は財政事情が厳しいんだから、会計年度任用職員の上限を7時間未満にするのは仕方ないんじゃないの?」
と思う人もいるかもしれませんが、その考えは間違いです。
というのは、総務省が明確に財政上を理由として、不合理に短い勤務時間にすることを否定しています。
○ 会計年度任用職員の任用に当たっては、職務の内容や標準的な職務の量に応じ
た適切な勤務時間を設定することが必要である。○ また、単に勤務条件の確保等に伴う財政上の制約を理由として、合理的な理由
なく短い勤務時間を設定し、フルタイムでの任用について抑制を図ることは、適
正な任用・勤務条件の確保という改正法の趣旨に沿わないものである。○ こうしたことから、パートタイム会計年度任用職員として位置づけること自体
を目的として、例えば、勤務時間をフルタイム会計年度任用職員よりも一日当た
り 15 分間短くするなど、わずかに短く設定することは適切ではない。
というわけで、財政事情だけで会計年度任用職員の勤務時間を制約するのは、趣旨に反するのです。
ホンネは「財政」だけどタテマエは「職務内容」と主張する当局
当局も財政上の理由で会計年度任用職員の勤務時間の上限を7時間として設定するのは問題だということは理解しています。
なのでタテマエ上はあくまでも「職務内容」によって上限を7時間以下としているという説明をします。
でも、なんだかんだで本音の部分は財政上の理由なんですね。
もちろんパートタイムでも可能な職場もあると主張する人もいるかもしれませんが、実際はパートタイムで回るように、何とかこなしてきたのが現実です。
しかし、悪化する財政事情から正規公務員の穴埋めとして、比較して賃金の低い非正規公務員の数を増やしてきました。
しかし、実際に現場で働いてみると窓口職場やケースワーカーといった職場は慢性的に人手不足です。
なので、パートタイムで途中で帰ったり(遅く出勤)するよりもフルタイムで共に職務に従事してもらいたいところです。
なので、ほとんどの職場での「職務内容」的には、8時間勤務のフルタイムが適切だと思います。
【まとめ】
これまでの労使交渉を含めて当局との交渉事は、結局「ない袖は振れぬ」ということで財政上の理由として主張も通らないことが多かったのが現状です。
しかし、会計年度任用職員にも生活があるため、財政上の理由だけで月給が減らされたり、退職手当がもらえなかったり、同一労働同一賃金の趣旨に反する働き方は許されません。
最後は自治体ごとの判断ですが、非正規公務員無しには回らない地方自治体だからこそ、会計年度任用職員の雇用条件を良いものにしていく方向性は重要だと思います。