会計年度任用職員制度のスタートが控えている中で、公務員労組の労使交渉も本格化してきました。公務員の働き方に大きく影響する制度については、労使交渉をすることが「努力義務」なので、当局も組合も水面下では忙しくなっております。
さて、今回のテーマは公務員労組の「本業」である「労使交渉」です。
本来、公務員には労働組合の結成は認められていないのですが、職員団体という形で一定認められており、公務労働者の権利拡大を進めるために行われるのが、労使交渉です。
しかしながら、本当に公務員の労使交渉は意味があるのでしょうか?
組合交渉ってどんなことをするの?
組合の交渉内容は、大きく分けて「賃金」と「定数」です。まず、労働組合の第一の目的は、組合員の福利厚生面を豊かにすることですので、もちろん給与アップ、福利厚生の充実を訴えます。これがいわゆる「賃金交渉」です。
一方で、職員が残業を減らし、時間外業務を無くすためには、職員数を増やすことが不可欠なので、職員定数を増やすための交渉を行います。(最近は、増やすというよりも、減らさないための交渉がメインですが・・)このような交渉を「職員定数交渉」といいます。
他にも、市長や副市長、人事政策を取り仕切る総務部長が交代した場合は、「着任交渉」ということをする場合もあります。いずれにしても、組合は職員の代表として、職員の声を届ける義務があるため、要所要所で交渉をしていくわけですね。
公務員の労使交渉は無意味と言われる理由
そんな公務員の労使交渉ですが、いろいろな見方ができます。公務員の現場の声を届ける機会でもあるし、それを届ける機会である組合交渉は重要な機会という見方です。しかしながら、組合交渉が、一部形骸化している面も否めません。
そこで、組合交渉が無意味だと言われる理由を整理しました。
公務員は労働協約が締結できない!
重要な点なので、最初に説明しておくと、公務員は労働組合は結成できません。公務員が組合と呼んでいるものは、正式には「職員団体」という組織であり、地方公務員法で認められているものであり、労働組合法の適用除外という点です。
よって、労働組合ではないことから、労働組合に認められている「労働協約」を締結することはできません。つまり、職員団体が交渉によって当局と締結する協約は、「紳士協定」にすぎず、法的拘束力はないのです。
公務員の勤務条件を決めるのは、結局「議会」
仮に当局との交渉の結果、協約を締結して、公務員に有利な給与体系、勤務条件が妥結されたとしても、議会で条例案が可決しなければ、それは意味がありません。
そもそも、私たち公務員の働き方を制約するのは、当局と職員団体の交渉力の差ではなく、公務員をとりまく地方公務員法、当該自治体の条例といった法律上の制約であり、その条例を決めるのは、住民の代表たる「議会」という点です。
なので、議会の動向を無視して、強引に組合交渉をしたところで、議会で条例案が可決する見通しが立たなければ、無意味といえます。
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那珂川市議会、7議案を否決 職員給与引き上げ案など 「事務改善が先」
那珂川市議会12月定例会は21日の本会議で、人事院勧告に基づく市職員らの給与引き上げに関連する執行部提案の7議案を全て否決し、閉会した。市職員の事務処理ミスが相次いだ中での増額は市民の理解が得られない、というのが否決の主な理由。
最近の地方議員は、地方自治体の財政難を危惧して、公務員の待遇改善には消極的ですし、逆におおさか維新の会のように、行政改革で職員定数を減らしたり、給与を切り下げようとする流れもあります。よって、議会を味方につけることは至難の業です。
最後は結局、財源の壁
これが結局、ネックになるのが、財政上の制約です。仮に公務員の基本給を上げる、具体的には人事院勧告に基づいて上げるにしても、当該自治体の財政状況によっては、不可能という場合も少なくありません。
先ほど紹介した那珂川市の場合のように、人事院勧告に従わず、議会が否決することだってあります。
なので、法律上求められている、勧告されていても、結局は財源、結局は議会に否決されてしまっては達成されないわけですね。
それでも労使交渉を続ける意義
とはいえ、公務員という労働者の声を届ける機会としては、労使交渉は必要不可欠といえます。むしろ、当局も本当に職員の声を反映した政策なのか、不安な面があるのです。
それゆえ、実現するかどうか、ではなく、まずは意見を伝えるという点が大事なのかもしれません。それに組合から労使交渉を奪ってしまっては、組合は単なるレクリエーション活動団体に成り下がります。まあ、この点は蛇足ですが、組合の存在意義が問われている中で、組合の存在感をアピールする機会でもあるわけです。
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