労働組合で執行役員をしている私ですが、組合で活動しているというだけで誤った情報がネット上に流れていることに気づきました。
組合ってことは、共産党なの?
いやいや、組合ってことは立憲民主党よね?
いずれにしても、組合=左翼=共産党というイメージで語られることが多いようです。確かに、共産党系の職員も一定数存在しますが、すべての労働組合が共産党系というわけではありません。
地方公務員で組合活動をしていないと、なかなか理解されないのですが、今回は公務員系労働組合の全国組織である自治労と自治労連の違いについて解説したいと思います。
地方公務員労組の2大全国組織「自治労」と「自治労連」
地方公務員の労働組合は各自治体ごとに組織されており、その組合のことを「単組」(たんそ)と呼び、その単組を都道府県単位にまとめるものが、「県本部」といいます。そして47都道府県の県本部をまとめる全国組織が、本日解説する「自治労」と「自治労連」です。
ちなみに、自治労の正式名称は「全日本自治団体労働組合」といい、自治労連は「日本自治体労働組合総連合」といいます。
自治労の組合員数は、直近の数字で約79万人であり、同じ地方公務員の労働組合である日教組が23万人であり、日本国内にある労働組合においてもUAゼンセンに次ぐ国内第2位の規模を誇ります。
自治労連の組合員数は、約14万人です。自治労と比べると5分の1程度の規模ですが、その結束力は強く、自治体によっては自治労よりも自治労連の方が組合員数が多い自治体も存在します。
ここで疑問に思うのが、地方公務員の全国組織がなぜ2種類あるのか?ということです。簡単に両者の違いを解説します。
自治労と自治労連の決定的な違いは支持政党
自治労と自治労連は、主義主張が微妙に異なるのですが、大きいところでは自治体労働者(地方公務員)の雇用条件の確保と向上を目指していることに変わりはありませんが、連携する政党が自治労と自治労連では異なるということです。
一応、建前上は政党支持については自由としているものの、実質的に自治労は立憲民主党を支持している一方で、自治労連は日本共産党を支持しています。
自治労は先述のとおり、79万人の組合員を誇ることから、衆議院選挙の際には24人の組織内・政策協力候補者を支援しました。
自治労連は組織内候補というものを立ててはいませんが、事実上、日本共産党の候補を支援しています。
やはり、数のうえでは自治労がリードしているといえますね。
そもそも自治労と自治労連は1つの組織だった
今でこそ別々の労働組合である自治労と自治労連ですが、もともとは1つの組織でした。
しかし、1989年に自治労が全国的な労働組合(ナショナルセンター)である「連合」に加入することに反対した勢力が分裂して、自治労連を立ち上げたわけです。
なお自治労連が、自治労が連合に加入することに反対した理由というのが、連合には、共産党に対して否定的な組合員(民社党系・同盟系)も多かったのも原因です。
その後、自治労は別のナショナルセンターである全労連に加入することとなります。ここで、整理すると以下のような労働組合のグループとなりました。
連合ー自治労 |
全労連ー自治労連 |
こうして二つの公務員系の労働組合が誕生したわけですね。
ちなみに現在も、連合系の自治労と、全労連系の自治労連はあまり仲は良くありませんし、対立しているところもあります。
最近でこそ、野党共闘ということで国政選挙レベルでは連携することもありますが、それも大同団結で、あくまで選挙で勝つためという目的です。
自治労も連合の中では、比較的左派系の労働組合ですが、先ほど少し触れた民社党系・同盟系の労働組合である電力総連やUAゼンセンの組合員を中心に、共産党系の自治労連と共闘することに否定的だったりします。
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あなたの自治体の組合は自治労系?自治労連系?
このように公務員系の労働組合は自治労と自治労連に大きく分かれていますが、自治体によって主流となっている労働組合が異なります。
全国的には自治労系の組合が主流となっていますが、自治体によっては自治労連系の組合が主流となっているようです。なので、労働組合に加入する前に参考にちらっと聞いてみても良いかもしれません。
また、組合事務所にいって、立憲民主党のポスター、もしくは共産党のポスターが貼っていないか見てみるとよいでしょう。
何はともあれ、労働組合のバックには必ずといっていいほど、政党の影が存在しているということですね。
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なお、全国的に自治労系の労働組合は労使協調路線ですので、人事課と結託しやすく出世しやすいといわれています。
公務員になって、政治的なものはちょっと苦手…という人もいると思いますが、労働組合に入るメリットは割とあります。