【随時更新】国家公務員の定年延長へ!問題点は?退職手当や共済はどうなる?

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韓国のレーダー問題のためか、あまり注目されていませんが、公務員にとって注目すべき法案が提出されずに見送ることとなりました。

 

その法案とは「国家公務員の定年延長法案」です。文字通り、国家公務員の現在の定年である60歳を段階的に引き上げて、最終的には65歳に定年とする中身です。

しかし、この法案は与党内から批判の声があり見送られてましたが、そもそもこの国家公務員の65歳定年延長法案の問題点は何でしょうか?

そこで、今回は公務員なら知っておきたい「国家公務員の定年延長法案」について解説したいと思います。

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国家公務員の65歳定年延長法案とは?

 

まずは、今回のテーマである国家公務員の定年延長法案の中身についてみていきます。

現在の国家公務員の定年は国家公務員法第81条の2第2項に規定されているように、原則60歳と決められています。

(定年による退職)
第八十一条の二 職員は、法律に別段の定めのある場合を除き、定年に達したときは、定年に達した日以後における最初の三月三十一日又は第五十五条第一項に規定する任命権者若しくは法律で別に定められた任命権者があらかじめ指定する日のいずれか早い日(以下「定年退職日」という。)に退職する。
○2 前項の定年は、年齢六十年とする。

 

それを2021年から段階的に3年ごとに1歳ずつ定年を引き上げて、2033年度には65歳に定年とするものです。

 

 

「そもそもなぜ定年延長をする必要があるの?」

 

これまでも、実はこの国家公務員の定年を65歳に延長しようという議論がされていました。

 

国家公務員の定年延長のこれまでの経過

平成20年6月:「国家公務員制度改革基本法(10条)」
平成23年9月:人事院「意見の申出」
平成25年3月:閣議決定「国家公務員の雇用と年金の接続について」
平成29年6月:閣議決定「骨太の方針2017」
平成30年2月:政府から人事院に「検討要請」
平成30年6月:閣議決定「骨太の方針2018」

 

そんな中でも、一番の契機となったのは、平成30年の人事院勧告における意見申し出です。

 

そもそも、現在の定年制度では、大半の公務員は年金が支給される65歳までは無収入となってしまうため、退職後も再任用職員として雇用されており、実質的には定年が延長されている状態です。

それに再任用職員の場合は、フルタイムではなく短時間勤務が多く、スキルがあるのに、十分に生かされておらず、まだまだ働けるのにもったいないといえます。

これからの日本は高齢化と人口減少によって働き手を確保するのが難しくなりつつあります。そこで、定年を延長することでベテラン公務員の活力を活用しようというのが狙いにあります。

 

 

「でも国家財政が厳しいのに、定年を伸ばしたら公務員人件費が増えてコスト増になるんじゃない?」

 

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そのとおりです。単純に定年を引き上げては公務員人件費がどんどん高くなってしまいますので、それは財政上はNGですよね。

 

そこで、60歳となった時点で管理職を降格させることで、定年延長後の給与は60歳になる前の7割相当額に引き下げて支給します。これが「役職定年制」というものです。

 

 

給与を7割に引き下げることで、仮に定年を延長しても人件費の伸びを抑制することができ、ベテラン公務員の活力を活用することができるというわけです。

 

 

「給与を30%下げても、そもそも公務員給与が高い水準なら財政の負担になるのは変わらないんじゃないの??」

 

「定年延長されたら、新規採用職員の数が減って組織自体が高齢化しちゃうんじゃないの??」

 

 

そうなんです!今回、政府が国家公務員の定年延長法案を見送った背景には、このような懸念があったからなのです。

 

国家公務員の定年延長法案が抱える課題

 

本日のニュースによると、今国会成立を目指していた国家公務員の定年延長法案が見送られることとなりました

 

国家公務員 定年延長法案見送り 人件費増の批判回避

政府は、国家公務員の定年を六十歳から六十五歳へ段階的に引き上げようと検討してきた国家公務員法などの改正案について、二十八日召集の通常国会への提出を見送る方針を固めた。四月の統一地方選と夏の参院選が重なる選挙イヤー。定年が延びる分の人件費に税金が充てられるため、野党から「公務員優遇」との批判を招きかねないと判断した。政府筋が十九日明らかにした。

提出時期は参院選後に再検討する。政府筋は「参院選を重視する首相官邸が、世論の批判を受けるリスクをできる限り避けたいと考えたのだろう」と語った。

 

(更新)65歳定年延長が正式に提出されることとなりました。

 

国家公務員定年、65歳に延長へ

政府は、国家公務員の定年を60歳から65歳へ段階的に引き上げる国家公務員法などの改正案について、来年1月召集の通常国会に提出する方向で調整に入った。高齢者の雇用促進に取り組み、安倍晋三首相の掲げる全世代型社会保障改革の実現を図る狙いがある。複数の政府関係者が18日、明らかにした。

改正案は、60歳を迎えた翌年度から給与を7割程度に減らして人件費の膨張を抑制する仕組みを採用。定年は2022年度から3年ごとに1歳ずつ引き上げ、34年度に65歳とする方針だ。法案は与党の意見も踏まえ、来年4月をめどに国会提出する日程を描いている。

 

 

正式に国家公務員の定年延長となりましたが、参考に、国家公務員の定年延長が見送られた背景を説明します。

 

国家公務員の定年延長は、給与を60歳の水準から7割に抑えることで、公務員給与の財政負担を抑えるような設計がされています。

 

しかし、日本では公務員給与は高い!というイメージが国民の中にあります。

 

「ただでさえ高い給与をもらっている公務員が定年延長なんてけしからん!」

「これは公務員利権の拡大であり、天下りの代わりだ!」

「新規採用の抑制につながり、若者の雇用を奪うものだ!」

 

そんな批判を受けるリスクがあります。

それに今年は統一地方選や参議院選挙など、選挙イヤーでありますので、公務員待遇を引き上げると国民が受け取れば、選挙に悪影響がある可能性があることから、法案提出を見送ったようです。

 

しかし、巷に言われているように定年延長は公務員優遇なのでしょうか?官民格差が広がることになるのでしょうか?

 

本当に定年延長は公務員優遇なのか?

ここで冷静になって考えてほしいのが、そもそも定年延長が公務員優遇なのか?ということです。

これは冒頭でも触れましたが、これからは人口減少でそもそも働き手が少なくなりつつあります。それは、公務員の世界でも同じです。

確かに公務員は人気の職業ではありますが、国家公務員のように国の重要な政策に関わる人材を長く確保しようと思えば、定年延長はやむなしといえるでしょう。

 

それに、事実上、再任用制度がありますので、65歳に定年延長をせずとも、定年後も多くの公務員は働いているのです。

 

平均寿命が延びて、生涯現役時代と言われている中で、公務員も長く働いてもらった方が、社会的にも恩恵があるのではないでしょうか。

 

給与水準も7割水準にカットしますし、高止まりするわけではありませんし、優秀な頭脳を国のために役立てるという方向で考える方が賢明だと思います。

冷静さを欠いた公務員バッシングという世論のため、今回の国家公務員の定年延長法案が見送られたのは、少し残念です。

 

定年延長後の退職手当はどうなる?

 

定年が延長されるということは、当然ながら退職手当の支給も遅れることとなります。そこで、少し不安になるのが、定年延長で給与が7割になるのだから、退職手当も減るのではないか?というものです。

 

そもそも退職手当の支給は以下の計算式に基づいて決定されます。

退職手当支給額 =基本額(退職日の俸給月額×退職理由別・勤続年数別支給割合)+調整額

 

退職日の俸給額というものが、直近の給料月額であり、支給割合というのは、「国家公務員退職手当支給割合一覧」で決まっています。

また調整額は現在の階級によって変わりますので、出世して階級が上がるほど多くなるのですね。

 

先ほどの退職手当の計算式をみてわかるように、基本額は7割にダウンしてしまいますし、調整額も「役職定年制」によって下がってしまいます。しかし、一方で勤続年数が5年伸びますので、そんなに影響はないんじゃないかとも思います。

 

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公務員共済や各種手当はどうなる?

 

7割に給与水準が下がるとはいえ、その間は雇用を維持されるわけですし、退職したら脱退しなければならない公務員共済にも引き続き加入することができます。

 

また通勤手当、住宅手当といった各種手当を受け取ることができるので、トータルで見ればそんなに心配する必要はないのではないでしょうか。

 

なので、単純に給与が7割に下がると大騒ぎするのではなく、手当や社会保険といった全体でみないと正しい理解は得られないと思います。

 

それに定年延長は今回見送られたわけですので、さらにじっくり内容を詰める時間ができるわけですから、今後の動向を注目していきましょう。

 

国家公務員の次は地方公務員も定年延長になる!

国家公務員の定年延長が見送られたので、そもそも気が早いは思いますが、仮に将来的に定年延長が提出され、可決されれば、地方公務員も同様に定年が延長されるのは間違いありません。

 

ちなみに地方公務員法28条の2に定年に関する記述があります。

(定年による退職)
第二十八条の二 職員は、定年に達したときは、定年に達した日以後における最初の三月三十一日までの間において、条例で定める日(以下「定年退職日」という。)に退職する。
2 前項の定年は、国の職員につき定められている定年を基準として条例で定めるものとする。

 

定年延長にはもちろん、各自治体の条例改正が必要となります。

地方財政も国家財政同様にゆとりがありませんので、しっかりと地方交付税と措置されるといった国の保障が必要となるでしょう。

しかし、地方自治体は国以上に人材が不足しているので、優秀な人材を確保して長く働いてもらうためには、地方公務員こそ定年延長が必要だと思います。

 

それに、定年延長に際しては、間違いなく労使交渉が行われ、その過程で内容が詰まっていくので、しっかりと各自治体の職員は交渉の中で自分たちに有利な制度内容の実現に向けて努力していく必要がありますね。

 

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