公務員の定年を延長する法案が再び審議される予定です。
定年延長というと退職手当(退職金)と役職定年による給与3割に引き下げばかりがクローズアップされますが、今日のテーマは「定年前再任用短時間勤務職員」についてです。
定年前再任用短時間勤務職員??
となった人もいると思いますが、この制度は、今回の公務員の定年延長とともに新しく導入される60歳以上の公務員を対象にした新しい公務員の働き方を可能とするものです。
まだ知名度が低く、オープンになっている情報が少ない定年前再任用短時間勤務職員ですが、ポイントをまとめましたので紹介します。【随時更新】
この記事は、以下の資料を参考にして書きました。
定年前再任用短時間勤務制度とは?【Q&A】
定年前再任用短時間勤務職員とは、公務員が65歳まで定年が延長されることに伴い創設される新しい公務員の雇用形態です。
一言で言えば、定年前再任用短時間勤務職員とは、60歳を超える職員で、希望すれば短時間勤務が可能な職員のことです。
定年前再任用短時間勤務職員になる方法は?
定年前再任用短時間勤務職員になるには、60歳以上に退職する必要があります。
60歳以上であれば、任命権者は定年前再任用短時間勤務職員とした採用することができるとしています。
任命権者は、年齢六十年に達した日以後にこの法律の規定により退職(臨時的職員その他の法律により任期を定めて任用される職員及び常時勤務を要しない官職を占める職員が退職する場合を除く。)をした者
定年前再任用短時間勤務職員の勤務時間は?
60歳を超える公務員は、本人が希望すれば、短時間勤務を可能となります。
フルタイム(常勤職員)は、週38時間45分勤務であるのに対して、定年前再任用短時間勤務職員は、週15時間30分から31時間という幅のある範囲で自由に働けるのです。
定年前再任用短時間勤務職員の定年は?
名前の通り、「定年前」再任用短時間勤務職員であり、この制度自体が公務員の定年延長にあわせて生まれた制度ですので、定年前再任用短時間勤務職員の定年は65歳です。
採用された職員(以下この条及び第八十二条第二項において「定年前再任用短時間勤務職員」という。)の任期は、採用の日から定年退職日相当日までとする。
定年前再任用短時間勤務のイメージについて、自治労がまとめていましたのでご参考にご覧ください。
定年前再任用短時間勤務職員は昇進や降格はある?
定年前再任用短時間勤務職員は昇進も降格もありません。
また転任もないので安心して働けますね。
任命権者は、定年前再任用短時間勤務職員を、指定職又は指定職以外の常時勤務を要する官職に昇任し、降任し、又は転任することができない。
定年前再任用短時間勤務職員の選考方法は?
定年前再任用短時間勤務職員の選考方法ですが、人事院規則で定めるところにより、従前の勤務実績その他の人事院規則で定める情報に基づく選考となっております。
なのて従前の勤務実績が悪くなれば選考されるようですね。
定年前再任用短時間勤務職員は60歳より前に退職してもなれるの?
残念ながら、60歳に達する前に退職した場合は、定年前再任用短時間勤務職員になることはできません。
定年前再任用短時間勤務職員になるのは自己都合退職?
公務員の定年は今後65歳となるわけなので、65歳に達する前に退職することは自己都合退職となる?という不安があると思いますが、当面の間は「定年」を理由とした退職と同様の取り扱いとするとのことです。
12 当分の間、第四条第一項の規定は、十一年以上二十五年未満の期間勤続した者であつて、六十歳(次の各号に掲げる者にあつては、当該各号に定める年齢)に達した日以後その者の非違によることなく退職した者(定年の定めのない職を退職した者及び同項又は同条第二項の規定に該当する者を除く。)に対する退職手当の基本額について準用する。
ご存知の通り、退職理由が「自己都合」と「定年」では支給率が大きく違いますので、65歳前に退職して定年前再任用短時間勤務職員となっても定年扱いで退職手当がもらえるのは、ありがたいですよね。
なお、11年以上勤務した職員に限られるので注意は必要です。
第四条第一項の規定
第四条 十一年以上二十五年未満の期間勤続した者であつて、次に掲げるものに対する退職手当の基本額は、退職日俸給月額に、その者の勤続期間の区分ごとに当該区分に応じた割合を乗じて得た額の合計額とする。
一 国家公務員法第八十一条の二第一項の規定により退職した者(同法第八十一条の三第一項の期限又は同条第二項の規定により延長された期限の到来により退職した者を含む。)又はこれに準ずる他の法令の規定により退職した者
国家公務員法第八十一条の二第一項の規定
(定年による退職)
第八十一条の二 職員は、法律に別段の定めのある場合を除き、定年に達したときは、定年に達した日以後における最初の三月三十一日又は第五十五条第一項に規定する任命権者若しくは法律で別に定められた任命権者があらかじめ指定する日のいずれか早い日(以下「定年退職日」という。)に退職する。
定年前再任用短時間勤務制度の給与の格付けは?
定年前再任用短時間勤務制度は、常勤職員と違って一度退職しているわけですので、格付けは一旦リセットされます。
・60歳以上の常勤職員:格付けはそのままで3割給与カット
・60歳以上の定年前再任用短時間勤務制度:低位の格付けに落ちる
定年前再任用短時間勤務制度の大義名分は、職員の経験と能力を活用するといっているのに、格付けが下がり給与が急減してしまったは、矛盾しているように感じます。
定年前再任用短時間勤務制度はいつから始まるの?
公務員の定年延長を可能とする「国家公務員法等の一部を改正する法律」と「地方公務員法なの一部を改正する法律」が改正されれば定年延長が始まります。
公務員の定年延長と定年前再任用短時間勤務職員制度は、ワンセットです。
つまり、公務員の定年延長は予定では2022年から始まりますので、定年前再任用短時間勤務職員制度も2022年から始まる予定です。
定年前再任用短時間勤務職員の概要について図でまとめてみましたので、ご参考にどうぞ。
なぜ定年前再任用短時間勤務職員が導入されるの?
そもそもの発端は、人事院総裁の国家公務員法などの改正についてに意見の申出があります。
この意見申出の中で、公務員の定年延長と定年前再任用短時間勤務職員を導入する意見が述べられています。
そして、この申出がなされたたあとに、正式に公務員の定年延長ということにつながります。
公務員の定年延長が導入される背景には、人生100年時代の現代日本において、そもそも60歳で定年退職するというのが、時代のニーズと合わなくなっているということがあります。
公務員時代に培った経験や実力を、60歳という若さで手放すのは惜しいと考えたため、定年を延長するに至ったというわけです。
一方で定年後は緩やかに働きたいと考えていたのに定年延長となり、これまで通りフルタイムで働くことに抵抗を覚える公務員もいるのも事実です。
「60歳を超えたら、趣味や家族との時間をもっと作りたいのに。。」
このような現場の公務員の声もあったため、公務員の定年を延長するとともに、公務員の自由な働き方(短時間勤務)を利用する働き方を実現するために、定年前再任用短時間勤務制度を導入することになったわけです。
定年前再任用短時間勤務職員のメリットとデメリット
では、定年前再任用短時間勤務職員として働くメリットとデメリットを解説します。
【メリット1】定年前再任用短時間勤務職員は余暇時間が増える
一番のメリットは、フルタイムに比べて定年前再任用短時間勤務職員は、勤務時間が少なくなので、その分余暇時間が増えます。
人事院の資料においても、週15時間30分から31時間という範囲で定年前再任用短時間勤務職員は働けると明記しています。
週15時間30分ということは、フルタイムの1日あたりの勤務時間である7時間45分とした場合、1週間あたり2日働くだけでOKということになります。
【デメリット1】定年前再任用短時間勤務職員は常勤職員に比べて給与が低い
フルタイム職員に比べて勤務時間が短いので、定年前再任用短時間勤務職員は、当然ながら給与が下がります。
フルタイム職員は格付けは維持されたまま、3割カットですが、定年前再任用短時間勤務職員は現役よりも低い格付けに落とされます。
なので、給与水準は間違いなく下がると思って良いでしょう。
【デメリット2】定年前再任用短時間勤務職員は共済組合から脱退しなくてはいけない
フルタイムの公務員であれば、共済組合の健康保険と共済年金に加入できますが、定年前再任用短時間勤務職員は、共済組合から脱退する必要があります。
その結果、定年前再任用短時間勤務職員は、全国健康保険協会(協会けんぽ)と厚生年金に加入することとなります。
【デメリット3】定年前再任用短時間勤務職員も兼業規制がある
あくまでも、定年前再任用短時間勤務職員も公務員であるので、職務専念義務という制約があります。
なので、定年前再任用短時間勤務職員は兼業をするには、現役公務員と同じく職場の許可が必要となります。
自由な働き方を標榜しているものの、やはり公務員という制約があるということですね、
【まとめ】60歳を超えたら定年前再任用短時間勤務職員として働くのも選択肢の一つ
公務員の定年延長に伴い始まる定年前再任用短時間勤務職員ですが、これを前向きにとらえると公務員の自由な働き方を可能とするので評価していいと思います。
一方で共済組合から脱退しなくてはいけないというデメリットもありますし、定年前再任用短時間勤務職員の待遇と職責がバランスするのかどうか、という心配はあります。
定年前再任用短時間勤務職員制度は、始まったばかりの制度ですので、不透明なところもありますが、今後も内容がわかりしだい追記していきます。
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