マスコミは公務員給与が高すぎ!という報道をし、巷の人は、公務員はたくさん給与をもらっていると勘違いしています。
しかし、公務員として働いていたら、逆に民間に比べて給与が低いなぁと感じているのではないでしょうか。実際に、平成18年に行われたら「給与構造改革」で公務員給与は下げられているのです。
では、どうして、この「公務員給与は高すぎる論」が広まっているのか?その誤報が拡散している理由と、その誤解を解きたいと思います。
公務員給与は人事院勧告で決まる
公務員の給与というものは、民間企業のように労働組合と経営者の労使交渉によって決まるわけではありません。
そもそも、公務員は労働基本権が制約されており、労働組合が賃金交渉で使える労働争議(ストライキ)等はできません。そこで、この労働基本権の代替として「人事院勧告」があるわけです。
この人事院勧告は民間給与に基づいて、毎年決められているので、不景気になれば、その分、公務員給与も下がる仕組みになっているのです。
よって、公務員給与だけ高止まりということは無いのです。基本は民間準拠の原則があるので、民間給与と乖離して、高給取りなんて、ありえないわけですよ。
この人事院勧告については、過去の記事で言及しているので、興味があればご覧ください。
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とはいえ、かつては公務員給与が民間に比べて高かった時代がありました。しかし、平成18年を境に変わりました。
平成18年の給与構造改革と地域手当の創設
公務員給与が高いということで、平成18年に公務員給与を下げる改革である「給与構造改革」が行われました。
実際、平成15年から平成17年の3か年の平均で、較差が最も大きい地域である北海道・東北地域及び中国・四国地域の較差と全国の較差との差民間給与が4.8ポイントありました。
4.8ポイントほど差があることで、公務員給与は地場賃金より高いという世論の批判を受けて行われたのが「給与構造改革」です。
この給与構造改革によって、較差が4.8ポイントから2.6ポイントに下がりました。公務員給与を引き下げて、官民格差を是正したわけですね。
給与構造改革の具体的な中身は以下のとおりです。
・民間賃金水準が最も低い地域に合わせて、俸給表水準を平均4.8%引き下げ ・民間賃金が高い地域に勤務している職員に3%から18%の地域手当を創設 |
もう少しこの改革を見てみると、公務員給与は俸給表(給料表)で決まっており、俸給表は、階級と経験年数を総合して決まります。
この俸給表を全体的に下げることで、公務員給与を下げたわけですね。
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また全体的に俸給表を下げるわけなので、逆に東京都特別区のように、民間給与水準が高い地域の公務員が不利にならないように、地域手当が新設されました。
全国の自治体の3割が地域手当を創設しており、1から7級ごとに分類されており、地域手当が一番高い東京都特別区では、20%の加算となっております。
給地区分 | 支給割合 | 代表的な自治体 |
1級地 | 20% | 東京都特別区 |
2級地 | 16% | 大阪市 |
3級地 | 15% | さいたま市 |
4級地 | 12% | 神戸市 |
5級地 | 10% | 京都市 |
6級地 | 6% | 仙台市 |
7級地 | 3% | 札幌市 |
このように地域手当が創設されておりますが、それでも全国の7割の自治体は地域手当は無くて、単純に俸給表を下げているだけなので、公務員給与自体は、全国的に下がっております。
にもかかわらず、なぜ、平成18年の改革から10年以上過ぎた今でも、公務員給与は高すぎると思っている人が多いのでしょうか?
公務員給与は高すぎる論は吹聴するマスコミ
そこで、公務員給与が高すぎる論を最も吹聴するのは、マスコミであることは言うまでもありません。いわゆる「公務員バッシング」の一環ですね。
とはいえ、まだまだ公務員人気は根強いものがあります。やはり、公務員といえば「安泰」と考えています。特に親世代の就職先としての公務員は良いイメージを抱いております。
しかし、親世代の公務員イメージと、実態は給与構造改革以後、非常に乖離しており、実態を知れば知るほど、民間の方が給与が良く、公務員給与は高くないのです。確実に公務員と民間サラリーマンの給与の官民格差は縮小しつつあるのです。
しかし、相変わらずマスコミは、公務員給与に対するイメージは高給取りという報道を行い、それを親世代も同じイメージを共有してしまうことで、「公務員給与高すぎる論」が未だに残り続けているわけですね。
確かに地場民間給与の水準より高い自治体も存在しているのは事実であり、先ほどの地域手当についても、国基準より高い自治体も存在しますが、その一部をとりあげて、すべての自治体、すべての公務員の給与が高いというのは、あまりに事実と反すると思います。
とはいえ、公務員はある種の社会のガス抜きとして使われるのが常でございますので、公務員バッシングに負けずに、気にしないことがいいのでしょう。
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公務員給与を今の水準として守るために、やはり労働組合は重要だと思います。加入するメリットも多いので、案外おすすめですよ。
公務員は給与だけでなく、手当についても重要です。第2の給与といっても過言ではないでしょうね。