所得税と同じくらいすべての世帯に関係がある税金が、今回紹介する住民税です。
特にこの住民税は市町村にとって貴重な税源ですので、地方公務員で私にとっても、非常に馴染み深い税金といえます
そんな住民税でたまに耳にするのが、今回のテーマである「住民税非課税世帯」と呼ばれているものです。
「住民税非課税の条件って何?」
「そもそも住民税の仕組みって?」
そこで、住民税の仕組みについて、現役公務員として説明したいと思います。
住民税の基礎知識
住民税非課税世帯について解説するまえに、まずは住民税について触れたいと思います。まず、住民税というものは、実際に住む市町村に払う「地方税」です。(なお、基準日は「1月1日」となっています。)
住民税は「均等割」「個人割」の2種類に分かれています。
まず「均等割」については、非課税となる人を除いて、基本的に所得に関係なく課税されます。みんな平等に課税されるから、均等割というわけです。
金額については、自治体によっては微妙に異なるのですが、均等割額は5,000円となっております。(都道府県民税が約1,500円、市町村民税が3,500円)
また「所得割」については、「前年の」所得金額で課税されます。よって、その年の所得にかかる税金は来年にかかるというわけです。
なお、所得割の税率は一律10%です。(内訳については、都道府県民税は4%と市町村税は6%)税率は所得税と違って一律なのですが、所得額が増えれば、その分、税金の絶対額は上がります。
住民税の所得金額を計算する方法
ここで勘違いしてはいけないのは、税金がかかるのは所得であって、収入ではない!という点です。所得とは、「収入-所得控除」で計算されますので、混同しないように注意が必要です。
そんな所得は以下の計算式で算出されます。計算式は以下の通りです。
総収入-給与所得控除=給与所得 給与所得-各種所得控除=課税所得 |
給与等の収入金額 (給与所得の源泉徴収票の支払金額) | 給与所得控除額 | |
---|---|---|
1,800,000円以下 | 収入金額×40% 650,000円に満たない場合には650,000円 | |
1,800,000円超 | 3,600,000円以下 | 収入金額×30%+180,000円 |
3,600,000円超 | 6,600,000円以下 | 収入金額×20%+540,000円 |
6,600,000円超 | 10,000,000円以下 | 収入金額×10%+1,200,000円 |
10,000,000円超 | 2,200,000円(上限) |
次に、主な各種所得控除額は、以下の通りです。
区分 | 控除額 |
基礎控除 | 33万円 |
配偶者控除 | 33万円 |
扶養控除 | 33万円 |
特定扶養親族控除 | 45万円 |
たとえば、年収150万円で妻1人、子供1人(中学生)の場合を計算してみます。
まず、給与所得は、180万円×40%=60万円(※この場合は、給与所得が65万円に満たないので、65万円となる)
65万円-33万円(所得控除)-33万円(配偶者控除)-33万円(扶養控除)=0円
よって、年収150万円であれば、所得0円ということになるわけですね。
住民税の所得対象とならない所得
住民税の所得対象とならないのは、以下のようなものです。
- 障害年金や遺族年金、恩給年金など 雇用保険の失業給付金
- 職業訓練受講給付金(ただし、訓練生活支援給付金は課税対象)
- 生活保護の給付金
- 通勤手当(ただし、月額10万円まで)
- 相続や贈与によって得た資産(ただし、相続税や贈与税の課税対象)
- 雇用保険の失業給付
- 傷病手当金
- 育児休業給付金
- 出産手当金
特に障害年金や遺族年金は課税対象となりませんが、基礎年金といった通常の年金は課税となるので注意が必要です。
住民税非課税世帯とは?
住民税非課税世帯というのは、住民税の均等割と所得割のいずれも課税されていない世帯を指します。
では、均等割と所得割の非課税となる所得ラインをみてみます。
均等割と所得割が非課税となる場合
均等割と所得割も課税されない場合
住民税の均等割と所得割がかからないのは以下の場合です。
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参考 練馬区HP
よって、本人のほかに扶養親族が2人いる場合は、35万円×3+21万円=126万円までの所得だったら非課税となります。
非課税となる金額については、自治体によって異なりますので、気になる方は自分のお住まいの自治体の税務課のページを確認することをおすすめします。
所得割が課税されない場合(均等割のみ課税)
住民税の所得割がかからないのは、以下の場合です。
|
よって、本人のほかに扶養親族が2人いる場合は、35万円×3+32万円=137万円以下の所得であれば所得割がかかりません。
住民税非課税世帯の優遇措置は?
国民健康保険料が減免
国保料は世帯単位で算定され、納付は世帯主が行うものとなっています。自治体によって異なるのですが、基本的に以下のような減免割合となっています。
減額割合 | 所得基準 |
---|---|
7割減免 | 33万円 |
5割減免 | 33万円+(加入者数×27.5万円) |
2割減免 | 33万円+(加入者数×50万円) |
余談ですが、住民税と違って、国保料は全額免除というものがありませんので、どんな低所得者でも3割は保険料を支払う必要があります。ここが、国保料の逆進性と言われる問題ですが、そもそも国保財政は悪化しているため、全額免除ができないという事情もあります。
高額療養費の自己負担限度額が下がる
高額となった医療費の窓口負担(自己負担)が自己負担額の限度額が払い戻される仕組みが「高額療養費制度」ですが、これも住民税の金額によって高額療養費の上限額が変動します。
所得区分 | 自己負担限度額 |
住民税の非課税世帯 | 35,400円 |
一般的には、80,100円+(総医療費※1-267,000円)×1%が自己負担限度額となりますが、非課税世帯であれば、どんなに高額な医療費も35,400円で済むのです。
日本学生支援機構の給付型奨学金の対象となる
大学進学に必要な奨学金で、返済の必要がない給付型の資格を得ることができます。
ア.住民税非課税世帯(家計支持者の市区町村民税所得割額が0円の人)
イ.生活保護世帯の人
ウ.社会的養護を必要とする人(※)
※18歳時点で児童養護施設、児童自立支援施設、情緒障害児短期治療施設(平成29年4月~「児童心理治療施設」に改称)、自立援助ホームに入所していた人、又は、18歳時点で里親、小規模住居型児童養育事業(ファミリーホーム)委託者のもとで養育されていた人
この場合は、住民税の所得割額のみでいいので、均等割のみ負担していてもOKです。
2019年プレミアム商品券の給付対象となる
2019年に消費税増税対策として配布されるのが、2019年プレミアム商品券です。対象者は、0歳から2歳以下の子どもがいる世帯と、所得の低い年金受給者、そして、住民税の非課税世帯です。
政府は2019年10月の消費税増税に合わせて発行するプレミアム付き商品券の制度設計を固めた。住民税非課税の世帯と2歳以下の子どもがいる家庭に加え、所得の低い年金受給者も購入できるようにする。対象者は最大2万5000円分の買い物が可能な商品券を2万円で買える。額面は1枚500円からで利用できるのは20年3月までの半年間とする。
プレミアム商品券は2万円で25,000円分の商品券を購入することができますので、5,000円得することになります。
住民税は自治体にとって大事な税源ですが、それでも払うこともできない住民や世帯も存在するのは事実です。なので、制度を正しく理解して、節税できるところはしっかり節税することが大事ですね。