久しぶりに興味深い公務員の副業事件が発覚しました。
今回の舞台は坂本龍馬の生まれた地、高知県において、教育委員会に所属する教諭が、同人誌販売によって約7年半の間で約175万円の利益を得ていたとする事件です。
事件の詳細は、後述しますが、個人的には7年半で175万円というのは、副業というより単なる趣味であり、金儲けやビジネスとしてやっていたと思えないのですが、副業が禁止されている公務員ということもあり、センセーショナルに報道されています。
そこで、今回のポイントとは
・なぜ同人誌販売の副業がバレたか?
・なぜ同人誌販売の副業を職場に事前申請していなかったのか?
・同人誌販売は副業としてコストパフォーマンスはどうなの?
という点で書きます。
公務員による同人誌販売の副業事件とは?
今回の公務員による同人誌販売の副業がバレた今回の事件を振り返ってみます。
事件については、高知の地元新聞の高知新聞が報道しています。
同人誌販売し利益175万円 県内教諭を処分 地方公務員法違反
高知県教育委員会は18日、営利活動を禁じる地方公務員法に違反したとして県立特別支援学校の40代の女性教諭を戒告の懲戒処分とした。
高知県教育委員会によると、女性教諭は漫画の同人誌を製作。2013年2月から約7年半、即売会やネット通販で52作品1万7千部を売り、約175万円の利益を得ていた。
女性教諭は「趣味の範囲で描いて売っているくらいの認識だった。軽率な行為だった」と反省しているという。
ここでおさらいですが、2013年から約7年半で約175万円の利益です。
ざっくり175万円を7年間で割ると、1年あたり25万円の利益です。
また52冊で175万円の利益ですので、1冊あたり33,000円程度の利益です。
いろんな捉え方があると思うのですが、正直言って、純粋に副業として評価した場合、非常にコストパフォーマンスが悪いと思います。
なので、これを公務員が禁止されている副業として罰するのは、正直気の毒な感じです。
もちろん、年間25万円というと、確定申告ライン(雑所得)の基準を上回ります。
3 2か所以上から給与の支払を受けている人のうち、給与の全部が源泉徴収の対象となる場合において、年末調整されなかった給与の収入金額と給与所得及び退職所得以外の所得金額との合計額が20万円を超える人
雑所得において年間20万円いないであれば、確定申告の義務がありませんので、副業をしている人は、あえて所得金額を年間20万円以下に抑えるという工夫をしています。
今回の場合は、微妙に年間20万円を超過しているので、基本的に確定申告の必要がありますが、現実の話としてこの程度の超過では確定申告をしていない人もいるのでしょう。
しかし、確定申告ラインを超過しているとはいえ、これは副業というよりも、やはり趣味のような印象があります。
なぜ高知の公務員は同人誌販売の副業がバレた?
ここで検討することは、なぜ高知の公務員は、同人誌販売の副業がバレたか?という点です。
今回の事件は、2013年から行っており約7年間も発覚していません。なのに、なぜバレたのでしょうか?
【仮説1】所得税の申告漏れによる税務署の調査
まず、副業バレの原因の一つは、税金の申告漏れによる税務署の調査によってバレるというパターンです。
先ほど触れたように、この高知県の公務員は年間で約25万円の利益(所得)を得ているので、確定申告の必要があります。
ただ、これまでの同人誌販売の利益を申告していたかどうかは、今回の報道ではわからないので、何ともいえませんが、仮に申告をしていなかったとしても、申告漏れの金額はせいぜい数十万円です。
そんなしょぼい金額のために、わざわざ税務署がマークしていたとは、ちょっと考えにくいところです。
【仮説2】職場の同僚からの密告
あくまでも推論ですが、公務員の副業がバレる第1位は、周囲の同僚の密告、つまり「チクリ」です。
同人誌販売をしているというのは、もしかしたら周囲の人間も知っていたのかもしれません。もちろん、それで販売をして利益を得ているということは知らなかったにせよ、同人誌の作成をしているということを周囲は知っていたのではないでしょうか。
もしくは、趣味程度でやっているから、別にバレても問題ないという甘い認識のために、周囲に漏らしてたのかもしれません。
公務員の世界は、非常に閉鎖的なムラ社会的なところがあります。
実際は大した利益を出していなかった同人誌販売ですが、副業で大儲けしていると勘違いした職場の人間が妬んで密告をした可能性もあります。
もちろん、公務員倫理に反するという真面目な公務員が人事課にタレコミをした可能性もあります。
いずれにしても、すべて推論にすぎませんが、公務員の副業がバレるというのは、大半が周囲の人間のタレコミなのです。
年間25万円程度の副業で懲戒免職はありえない
今後、この同人誌販売がバレた高知の公務員はどのような処分を受けるでしょうか?
公務員の処分は
・免職
・停職
・減給
・戒告
・訓告
・厳重注意
という種類があります。
もちろん最も重い処分は懲戒免職(クビ)ですが、まずもって公務員が副業をバレたとしても懲戒免職になることはありえません。
それに金額も年間25万円と大した金額ではありません。
実際、かつて不動産投資で巨額の副収入を得ていた公務員も停職6カ月の処分程度でした。
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よって、今回の場合は、せいぜい戒告程度ではないかと思います。もちろん収入を得ていたということで減給も覚悟しないといけませんが、年間25万円程度で、はたして・・・。
事前に同人誌販売を職場に申請すれば処分されなかった?
ここで考えるのが、もしもこの高知県の公務員が、事前に同人誌販売を職場に申請をしていれば、処分されなかったのではないか?という点です。
正式には「営利企業等従事許可申請書」という形で、事前に申請をして、人事課が公務委に支障が無いと判断すれば副業は可能です。
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しかし、果たして人事課が副業の申請を認めるでしょうか?
同人誌というのは、極めて繊細なテーマを扱うこともありますし、仮に人事課に販売している同人誌の提出を求められたら恥ずかしい思いをすることにもなります。
公務員の副業緩和のトレンドが少しずつ限定的に広がっているとはいえ、まだまだ発展途上です。
そんな状況で同人誌販売するので、許可申請をするのは、公務員には高いハードルと言わざるを得ません。
それに趣味という認識だったとしたら、事前申請をしていなかったという動機もわかる気がします。
副業としての同人誌販売はコストパフォーマンスが悪い?
もちろん専業で同人誌を販売をしてビジネスとして生計を立てている人もいるでしょう。
しかし、副業で同人誌という作品を作るのは、コストパフォーマンスという点ではあまりよくはないでしょう。
即売会やネット通販で販売したとしても、やはり執筆の手間と在庫を抱えてるリスクを考えると、今回の高知県の同人誌販売は副業というよりも趣味のような気がするんですよね。
今回の事件をきっかけにして、もう少し緩やかに公務員の副業を認めるという方向に流れた方が建設的だと考えるの私だけでしょうか。
この記事に関連して、続きを書きました。
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