公務員の風当たりは相変わらず強いですね。やっぱり「公務員はラクしている」「公務員は厚遇のお手盛りだ」といったステレオタイプの批判がネット上にもあふれています。
そんな公務員批判の代表格が、「公務員のトンデモ手当」バッシングです。トンデモ手当については後述しますが、もはや残っている自治体が数少ない持ち家手当を筆頭に、自治体ごとの手当てについても、「厚遇だ!」という批判があります。
そこで、トンデモ手当といわれている「特殊勤務手当」の実態については、現場にいる公務員として書きたいと思います。
特殊勤務手当とは?
公務員の特殊勤務手当は、文字通り、通常とは異なる業務に従事する職員に支給する手当です。具体的な手当については、各自治体の条例や規則によって定められています。
後述しますが、危険、汚い、きつい、といった業務に対する手当です。
例えば、豊田市では、豊田市職員特殊勤務手当規則において定められています。
具体的な特殊勤務手当の種類と金額は、以下のようなものです。
特殊勤務手当名 | 金額(1日) |
税務徴収手当 | 450円 |
環境保全手当 | 500円 |
福祉現業手当 | 300円 |
危険手当 | 500円 |
消防特殊業務手当 | 550円 |
消毒防疫作業手当 | 290円 |
私自身もケースワーカーとしての経験があり、特殊勤務手当を受けた経験があるので、その経験も踏まえて、特殊勤務手当の代表格である「税務徴収手当」「環境保全手当」「福祉現業手当」の3つを紹介します。
税務徴収手当とは?
公務員の重要な仕事として、税金を滞納して払わない滞納者への督促、取り立て、場合によっては差し押さえを行います。税金を取り立てるというのは、かなりの精神的ストレスであり、税金を取られて喜ぶ人はいませんので、罵詈雑言を浴びせられます。
それに対して、唯々お願いをするのが基本であり、論破するなんてもってのほかです。あくまでも、お願いです。公務員じゃない方は、差し押さえをすればいいじゃないかと言われる方もいますが、手続き上許されないわけです。
そんな言い返すこともできない状況で業務に従事して、せいぜい1日あたり500円程度です。1カ月18日として、500円×18日=9,000円程度です。
環境保全手当
雨の日も、暑い夏のも、ごみ収集の現業職員の方は、必ずごみを回収してくれます。かつては、ごみ袋が黒い袋だったときは、何が入っているかわからず、ケガをする現業職員も多かったようです。
今でも、謎の液体が顔にかかってかぶれたり、ひどい臭いが染みついたり、非常にきつい、汚い職場です。それでも、プロ意識をもって職務にあたってくれているので、同じ公務員としても頭が下がります。
そんな業務に従事しても、1日500円です。
福祉現業手当
これはいわゆるケースワーカーに支給される手当です。ケースワーカーが日々向き合う生活保護受給者は、お年寄りから精神障害者、元暴力団、元服役囚など、まさにバラエティに富んだ人ばかりを相手にします。
また、毎月の生活保護の支給日には、大勢の生活保護受給者でむせ返る事務所で、対応をするわけですから、非常にストレスを感じる環境です。
そんな生活保護受給者の中には、全身ブランド品に身を固めて、無理な要求をする受給者も存在しており、場合によっては暴力事件に巻き込まれることもあります。
生活保護受給トラブルか ケースワーカーが金づちで殴られる 東大阪
21日午後0時15分ごろ、大阪府東大阪市西鴻池町の理容店兼住居の1階店舗で、生活保護受給の話し合いに訪れた同市非常勤職員の女性(44)が、同店経営の男に金づちで頭を殴られた。女性は額から出血しながらも、住居手前の扉に鍵を閉めて2階へ避難。男が金づちで扉を壊して追いかけて来たため、女性は2階の窓から地上に飛び降り、近くの交番に駆け込んだ。女性は着地時に右足を骨折するなどして重傷。
大阪府警河内署は殺人未遂容疑で、この住居に住む同店経営、阪田晃弘容疑者(81)を現行犯逮捕した。「殺してやろうと思った」と容疑を認めている。
同署によると、阪田容疑者は市から生活保護を受給。ケースワーカー担当の女性と話し合いをしていた際、金づちを複数回振り回したという。
同署は受給をめぐるトラブルがあったとみて調べる。
このようなリスクを抱えながら業務に従事しているため、公務員でもケースワーカー、生活保護職場は人気ランキングワースト1職場です。しかし、1日当たりの手当は300円や500円程度です。
特殊勤務手当は最低限に必要な手当
今回は代表的な特殊勤務手当である「税務」「清掃」「生活保護」の3つのフォーカスして紹介しましたが、それ以外にも下水路を清掃したり、災害対応に徹夜で従事したりなど、幅広く存在します。
わずか数百円の手当のために、公務員は業務をしているわけではなく、むしろそのような手当を廃止して、職員数を増やしたり、業務を減らしてくれる方が助かります。
しかし、特殊勤務手当をトンデモ手当と言われてしまう世の中は、非常に世知辛いですね。
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もはや残っている自治体はほぼ無い、持ち家手当ですが、いずれすべての自治体においても廃止されるでしょうね。
退職手当(退職金)も減らされつつあり、これも自治体の財政難が背景にあるのは言うまでもありません。