あなたは自分の自治体の職員定数をご存知ですか?
近年、自治体の公務員数は減少傾向にある理由はなんでしょうか?それを考える鍵となるのが、今回のテーマである「条例定数」です。
そこで、今回は公務員の職員数を規定する条例定数とは何か解説し、地方公務員数が減少した理由について考えてみたいと思います。
地方公務員の数は条例で決まっている
その自治体で勤務する公務員の数は、地方自治法第172条第3項で定められています。
第百七十二条
前十一条に定める者を除くほか、普通地方公共団体に職員を置く。
○2 前項の職員は、普通地方公共団体の長がこれを任免する。
○3 第一項の職員の定数は、条例でこれを定める。ただし、臨時又は非常勤の職については、この限りでない。
○4 第一項の職員に関する任用、人事評価、給与、勤務時間その他の勤務条件、分限及び懲戒、服務、退職管理、研修、福祉及び利益の保護その他身分取扱いに関しては、この法律に定めるものを除くほか、地方公務員法の定めるところによる。
よって、職員数は条例で決まっていることから「条例定数」と呼ばれています。また自治体によっては「職員定数」と呼ばれたりします。
では、条例でどのように定めらているのでしょうか?
例えば、相模原市では「相模原市職員定数条例」において職員数を定めています。
相模原市職員定数条例
(職員の定数)
第2条 職員の定数は、次のとおりとする。
基本的に職員定数は、市長部局、議会、教育委員会、消防局、行政委員会(選挙管理委員会事務局・監査委員事務局・農業委員会事務局など)ごとに定められています。
これらは条例定数ですので、議会の承認を経て制定されますので、職員を減らしたり、増やす場合は条例定数を改正する必要があるわけです。
臨時職員・非常勤職員は職員定数外
職員定数の中に含むのは地方公務員の正規職員のみです。もう一度、冒頭で紹介した地方自治法の条項を振り返ります。
第百七十二条
○3 第一項の職員の定数は、条例でこれを定める。ただし、臨時又は非常勤の職については、この限りでない。
よって、臨時職員は定数の中に含めません。また、個別の条例で委嘱される非常勤特別職も条例定数の範囲外です。このように、臨時職員や非常勤特別職は定数外職員と呼ばれています。
定数の中に含んでいないため、各自治体の当局は正規職員で削減した部分を、定数外の臨時職員や非常勤職員の定数外職員で穴埋めをしています。
地方公務員の臨時・非常勤職員に関する実態調査をみても、全国の臨時職員の総数は26万人ですし、非常勤特別職を含めると、実に64万人が臨時・非常勤職員というわけです。
実際、非正規職員が正規職員を占める割合が、13%だったものが、平成24年時点で17.9%に増加しています。
地方自治体の職員数は減少傾向
近年、地方自治体の職員数は減少傾向にあります。
最初のきっかけは、やはりバブル崩壊による景気悪化に伴う税収減です。その間にも小泉構造改革や集中改革プランによって、着実に公務員の人減らしが進んでいます。
総務省が公表しているグラフをみれば、減少傾向は一目瞭然です。
一般行政職、福祉関係、教員、消防・警察、公営企業職員すべて同様に減少傾向です。地方公務員の総数はピークの平成6年の3,282千円から直近の平成29年の2,743千人に下がっております。
では、なぜここまで職員定数は下がっているのでしょうか?
なぜ地方公務員数は減少傾向にあるのか?
行政改革による定数削減
地方公務員数の削減が始まったのは、平成7年からですが、減少要因の一つとしては、地方自治体の行政改革による職員定数削減です。
具体的には、条例定数を削減する改正により定数のアッパーを下げることで、職員の定数を下げました。
自治体の行政改革も、国の指導や通達が背景にあったのは、言うまでもありません。なので、自治体が自主的に職員数を減らしたというよりも、国に指導を受けて減らさざるを得なかったというのが実態です。
団塊世代の大量退職
行政改革が政策的な減少であるならば、団塊世代の大量退職は自然減です。団塊世代が大量の退職していく中で、退職者と同数の職員を採用すればいいのですが、実際は退職者以下の採用に抑制しました。
新規採用を抑制する一方で、退職者を再任用職員という形で雇用して、職員不足の穴埋めで使っているのが実態です。
市町村合併
2003年から2005年をピークに行われた平成の大合併も公務員削減の大きな原因です。平成11年には3,232あった自治体は、平成22年で1,730に大きく数を減らしました。
合併すれば当然重複する事務や人員が発生するので、合理的理由のもとで職員を下げることができます。
市町村合併の本当の目的は、公務員数の削減だったと思います。公務員の仕事は基本的に労働集約型のサービス業ですので、市町村合併を行えば、自治体の歳出の大部分を占める人件費を下げることもできるわけですから。
職員数削減は、自治体サービスの低下につながる恐れがある
職員定数は、国の方針や社会情勢、IT化といった業務効率等によって減少傾向にありますが、基本的に地方自治体の業務は住民と直接接するサービス業ですから、職員数が下がることで、住民サービスが低下する恐れがあります。
もちろん、不必要な業務についてはリストラクチャリングをしていく姿勢は大切ですが、財政事情だけで職員定数を削減するのは、目先の利益を取るあまり、長い目で見たら役所の人材が育たないリスクがあると思います。
最近の問題でいえば、千葉県野田市の小4女児虐待死亡事件でも、その背景には現場のマンパワー不足があると思います。この点は、別途記事で書きますが、現場の児童福祉司不足というものも、事件を未然に防げなかった要因としてあると思います。
地方公務員としても、安易な行政改革にはしらずに、本当に必要な業務と、それに見合った職員数の確保が重要だと考えます。
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公務員定数が下がる背景には、公務員バッシングがあるように感じます。職員定数を下げる一方で、公務員給与も引き下げるような世論の声もあります。しかし、その背景には、古い誤った公務員観があるように思います。
公務員の職員数を含めた勤務条件を維持・改善していくためにも公務員の組合も重要な存在だと思います。