12月の大きな社会現象となったペイペイの100憶キャンペーンですが、わずか10日間という短い期間ながらも大きなインパクトを与えました。
すでに日本国内には、「LINEペイ」「オリガミペイ」といった先行のスマホ決済があったにもかかわらず、ペイペイの認知度は大きく広がりました。
今後もペイペイは第2第3のペイペイ普及に向けたお得なキャンペーンを行う考えがあることを公式サイトでも発信しております。
そんなペイペイですが、今後日本の決済スタイルを大きく変える可能性があり、スマホ決済の覇権を取る以上の壮大な野望を感じました。
つまり、ペイペイを仕掛けるソフトバンクとヤフーの本当の狙いは、ずばり「ペイペイ経済圏」を作ることだと思います。
経済圏ビジネスモデルの代表企業「楽天」
経済圏ビジネスモデルにおける、日本の代表企業はやはり「楽天」であることは間違いありません。
楽天は、自社の経済圏ビジネスモデルを「楽天経済圏」と名付けて、楽天の大きな成長戦略の柱として位置付けています。
楽天は、通販サイト「楽天市場」を筆頭に、楽天カード、楽天銀行、楽天モバイル、楽天トラベル、楽天証券などなど、多くの自社サービスを抱えております。
これらの楽天の自社サービスは、利用に応じて受け取れる「楽天スーパーポイント」でつながっています。
いわば、楽天スーパーポイントは、楽天経済圏における通貨といって差し支えありません。
そんな楽天スーパーポイントは、スーパーポイントアッププログラム(SPU)を活用することで、さらに倍々にポイントが受け取れる仕組みとなります。
貯まった楽天スーパーポイントは、楽天市場だけでなく、電子マネーの楽天Edyにチャージすることで、Edyが使えるお店でも利用することができます。
つまり、楽天グループ以外のサービスも、楽天スーパーポイントが利用できることから、楽天スーパーポイントは、ポイントというよりも通貨として機能しています。
一般ユーザーはすべての生活に必要なサービスを楽天で受けることができ、大量の楽天スーパーポイントを受けることができることから、一種の経済圏とみなして、「楽天経済圏」と呼んでいるわけです。
とはいえ、この楽天経済圏ビジネスモデルの本質は、従来からあった顧客の囲い込みビジネスモデルの延長にあるものです。
一般ユーザーを楽天市場で囲い込むことで、競合他社の通販サイトであるAmazonやYahoo!ショッピングへの顧客流出を防ぐためです。
特に楽天は、主力である楽天市場の売上しつつあり、ポイントを多少ばら撒いてでも、顧客をつなぎ留めたいという思いが見え隠れします。
平成30年10月に携帯事業にも参入する予定であることから、少しでもユーザー獲得のために、既存の楽天経済圏の「住民」を確保しておきたいのですね。
100憶キャンペーンでペイペイが得た収穫
では、楽天経済圏について踏まえたうえで、ペイペイを見てみます。ペイペイはスマホ決済(QRコード決済)の一つであり、国内では比較的後発の部類に属します。
この手のサービスは、先行企業ほど有利であり、参入が遅れれば遅れるほど不利になる傾向にあります。
しかし、このピンチをペイペイの事実上の運営企業であるソフトバンクグループとヤフーは、豊富な資金力にモノを言わせて、大々的なバラマキキャンペーンを行いました。
それが、話題となった「100憶あげちゃうキャンペーン」というわけですね。
ペイペイを利用すれば、利用金額の20%をもれなくペイペイとして還元するだけでなく、ソフトバンクユーザーやYahoo!プレミアム会員は、一定の確率で全額還元(無料)となるお得なキャンペーンでした。
このキャンペーンは、当初は平成31年3月31日までを予定していましたが、予想を大幅に超えて、わずか10日間で予算消化にともなって、終了しました。
このキャンペーンにより、ペイペイは一度に190万人のペイペイ会員を獲得することができ、連日マスコミやネット上で報道されたことで知名度も拡大しました。
このキャンペーンによって、いくつもの収穫がありました。
まずは、最も重要な要素であるペイペイの会員であり、同時にペイペイを導入する企業や店舗です。また、連日の報道によってペイペイのことを知り、将来の見込み客となる人々です。
そして、予想を超える利用によってパンクしたペイペイのサーバーの維持管理に関するノウハウです。今後、ペイペイが爆発的に普及すれば、当然、この手のサーバー維持管理のノウハウはより重要となります。
また、今後、ペイペイがキャンペーンをすれば必ず拡散してくれるブロガーやインフルエンサーです。実際、ペイペイの記事を書くことでアクセスが増えるので、両者ともwin-winなんですね。
これらはすべて、今後のペイペイ拡大のために必要な要素であり、それを得られたので、ペイペイにとって100億円は非常にコスパの良い投資だったといえるのではないでしょうか。
期間固定Tポイントのペイペイに変更される衝撃
ペイペイの100憶キャンペーンの最中、あまりクローズアップされていなかったのですが、衝撃的なニュースが発表されました。
これまで、Yahoo!ショッピングや、ソフトバンクの長期継続特典で受け取れていた期間固定Tポイントが、平成31年4月からペイペイに変更するというものです。
この発表は何が衝撃的かといえば、ペイペイのアカウントを持っていなければ、特典を受け取ることができない、ということです。
つまり、現在、ペイペイを利用していなかったソフトバンクユーザーやYahoo!プレミアム会員は、特典をもらうためにはペイペイ会員になる必要があるということです。
現在、ソフトバンクユーザー(ワイモバイル会員含む)は、全国に約4000万人存在し、Yahoo!プレミアム会員は1773万人(※ID数)存在します。
もちろん、重複している数字もありますが、まだすべての会員がペイペイ会員にも登録していないことから、今後、いっきにペイペイ会員になることが予想されます。
特に日本国内の三分の一の携帯電話シェアを取っているソフトバンクのユーザーが、ペイペイ会員となれば、現在のスマホ決済シェア1位のLINEペイを追い抜くことは間違いないでしょう。
ペイペイの真の狙い「ペイペイ経済圏」
ペイペイはキャンペーンの話題先行で、スマホ決済の利便性自体は、認知されておらず、キャンペーンが終われば、そんなに普及しないのではないか、という声もあります。
しかし、私は今後、ペイペイが日本における決済手段の主力になる可能性があると考えております。
確かに日本国内のキャッシュレス決済は、クレジットカードが主流であり、支払いを先送りできて、ポイントを貯められるなど有利な点が多いです。
しかし、一方でクレジットカードを導入する企業は、支払いに必要な端末や、支払い事に発生する手数料負担が発生します。
そのため、中小零細店舗は、いまだにクレジットカードに対応しておらず、キャッシュレス決済ではなく、現金払いのみとなっています。
しかし、このペイペイはクレジットカードのような専用端末は不要であり、手数料も無料としています。
初期導入費、決済手数料、入金手数料といった、1円でも惜しい中小零細企業にとっては、コスト削減になりますし、支払い手段が広がれば、顧客の獲得も期待できます。
このようにキャッシュレス決済の普及において、足かせとなっている手数料コストが安いことが、スマホ決済の最大の魅力なのです。
それに、先ほど伝えたように、これまで限られたネット上の店舗でしか使えなかった期間固定Tポイントがペイペイとなることで、リアル店舗でも利用できるようになります。
期間固定Tポイントのペイペイ変更は、流通可能なフィールドが広がるため、それだけペイペイの魅力を高めることになるわけです。
今後、ソフトバンクユーザーとYahoo!プレミアム会員はペイペイ会員になることは間違いありませんが、同時にYahoo! JAPANカードの会員もペイペイ会員となる可能性があります。
というのは、現在Yahoo! JAPANカードの新規入会特典は、期間固定Tポイントでしかもらえませんが、これもペイペイに変更する可能性があるのです。
現在は、ソフトバンクやYahoo!に関するサービスで受け取れるポイントサービスは、別企業であるカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)が展開するTポイントサービスです。
しかし、これからは自前でペイペイというサービスを持つことができるので、わざわざ他社に手数料を払ってポイントサービスを続ける必要はないのです。
つまり、ソフトバンクとYahoo!が近い将来、Tポイント経済圏から離脱し、独自の経済圏であるペイペイ経済圏を作り上げると予想します。
そうなれば、間違いなく、Tポイント経済圏には大打撃であり、先行する楽天経済圏は驚異となるでしょう。
ソフトバンクとYahoo!は、ソフトバンク携帯電話はもちろん、Yahoo!ショッピング、LOHACO、ヤフオク!、Yahoo! JAPANカード、Yahoo!トラベル、GYAO,ジャパンネット銀行など、多くの自社サービスを展開しています。
これらすべてが、Tポイントからペイペイに置き換われば、いっきにペイペイの利用機会が増えるのは間違いありません。
これらのサービスをペイペイで利用できて、ペイペイが貯まるようになり、楽天のスーパーポイントアッププログラムのようなポイント倍増サービスをYahoo!が行ったとしたら、、、これは、国内のスマホ決済はもちろん、ポイントサービス業界に激震が走るでしょう。
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ペイペイはおそらく、会員獲得の第2、第3のキャンペーンを行うことは間違いありません。
個人的には、お正月初売りシーズンか、ペイペイのYahoo!ショッピングでの利用が解禁される平成31年2月頃が怪しいとみています。
ペイペイ経済圏を広げるうえで、重要な主要クレジットカードであるYahoo! JAPANカードについても、次のバラマキの前に作っておいて損はないと思います。