100億バラマキキャンペーンで、一躍有名になったペイペイですが、このキャンペーンはもちろん慈善事業でも何でもなく、純粋にペイペイのプロモーションです。
このキャンペーンのポイントは、これまでテレビ局や大手広告代理店に支払っていた広告宣伝費を顧客に直接還元することで、顧客獲得を図っていることです。
なお、ペイペイ自体は、まだ一銭も儲けていません。12月4日に始まったばかりのサービスですが、おそらく数十億円の赤字になっていると思います。とはいえ、この赤字は、純粋な赤字ではなく未来の顧客獲得につながる投資でもあります。
それにペイペイのバックにいるのが、Yahoo!とソフトバンクというIT業界の巨人なのですから、資金面は問題無いですしね。
そんな赤字覚悟のペイペイのキャンペーンで得しているのは誰か?ペイペイを利用している一般ユーザー?ペイペイを設置しているお店?と考えると、今一番得しているのは、ペイペイを紹介しているブロガーだと思います。
2019年9月3日更新
ついにペイペイのアフィリエイトが登場しました。これからブロガーがもっとペイペイをレコメンドしていくことは間違いないでしょう。

ペイペイのプロモーション戦略を分析する
今回のペイペイの行なっている100億あげちゃうキャンペーンを分析する前に、一般的なプロモーション戦略を説明します。
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まず、企業が新商品なり、新サービスを提供する最後は、自前で広報担当やマーケティング担当がおり、テレビやラジオ、ネットといったメディアの運営企業と個別に調整するわけですが、それを個別に行うのは、煩雑ですし、そもそも、メディアとネットワークが無い場合もあります。
そこで、頼りになるのが電通や博報堂といった広告代理店であり、彼らにお願いすれば、魅力的なキャッチコピーや、映像CM、メディアミックス戦略を提供して、自社製品を宣伝してくれます。
しかし、当然ながら、この広告宣伝には莫大の費用が必要となりますので、広告主としてはそれ相応の費用を払うわけですね。日本国内の広告市場を電通のサイトから見てみます。
2017年の日本における総広告費は、6兆3,907億円であることから、広告業界は巨大な市場でありますが、その大部分は電通や博報堂といった大手広告代理店が、半ば牛耳っているわけですので、広告代理店の従業員は高年収というわけです。ここまでが、いわゆる一般的な広告代理店を通じたプロモーションです。
では、次にペイペイのプロモーションを見てみます。最初にお断りすると、今回のペイペイの100億あげちゃうキャンペーンにも、広告代理店は関係していると思います。
しかし、広告代理店に支払う額よりも、圧倒的に顧客に還元している額が多いという特徴があります。広告代理店ではなく、顧客に直接還元することがペイペイ100憶キャンペーンの特徴です。
普通、この手の決済サービスは全国民に関係するサービスなので、大々的にCMをガンガンして認知度向上を図るのですが、そこまで目にしていません。つまり、そんなにCMに予算をかけていないということがわかります。
その現れとして、ペイペイのCMの放送頻度はそんなに多くありません。
しかし、みんなペイペイを知っています。情報感度が低い私の親でさえ、ペイペイを知っています。なぜか?それは、ペイペイの100億あげちゃうキャンペーンが話題を呼び、マスコミがニュースとして取り上げたからです。
もちろん、マスコミに取材依頼やプレスリリースをしたと思いますが、謝礼を払って記事にしてもらっているわけではなく、ペイペイのキャンペーンが話題になっていることを嗅ぎつけて記事にしているだけです。
それに幸か不幸か、最近のソフトバンクの通信障害もあってペイペイが余計に注目されました。
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逆にいえば、話題にならなければ、ペイペイのキャンペーンは失敗だったというわけです。
バラマキで顧客を囲むのはソフトバンクの常套手段
このQRコード決済市場というのは、国内ではこれからですが、お隣中国のQRコード決済サービスである「アリペイ」もはや、現金よりもQRコード決済が当たり前になりつつあり、国民のインフラとなっているのです。
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つまり、ペイペイには100億かけても、国内の決済インフラを掌握したいという強い意志を感じるわけですね。
ペイペイの出資元であるソフトバンクもYahoo!も、過去にユーザー獲得のために一番最初は、低価格もしくは無料でサービスを提供し、場合によっては、今回のようにバラマキをしてでも、インフラなりうる事業のシェアを取りに行きました。
いわば、このペイペイの100億あげちゃうキャンペーンは、これまでのソフトバンクグループがやってきたお家芸を踏襲したものなのです。
プラットフォームやインフラを掌握することの重要性は、ソフトバンクグループの総帥である孫正義会長が最も理解しているところであり、巨額債務を背負ってでもボーダフォンを買収したのは、その代表例でしょう。
ペイペイの収入源は店舗から手数料
ペイペイのQRコード決済サービスにおける収入はあくまでもペイペイを導入した店舗からの手数料収入となります。
クレジットカードの場合は、決済額の3%ほどマージンを取りますが、現在のところ、ペイペイはこのお店に課す手数料を無料としています。
なので、お店としても、現金がない顧客も来店してくれる可能性にもつながり、しかも無料なのですから、非常にお得というわけです。
しかも、電子マネーやクレジットカード決済に対応するためには、専用の機械が必要になりますが、QRコード決済には、そのような機械をお店は不要です。
お店にとって導入コストがほぼゼロで、かつ現金管理の煩わしさもないため、便利なのですね。とはいえ、いずれペイペイもお店から手数料を取ると思いますが、今はあくまでも、種を蒔いている時期であり、刈り取りをするのは、まだ先のことだと思います。
しかし、全ての店舗がペイペイに対応すれば、広く浅く、毎日手数料収入が自動的にガッポガッポ入ってくるわけですから、これは凄いビジネスモデルですね。
QRコード決済サービスの登場で最も戦々恐々としているのは、おそらく電子マネー業界、次はクレジットカード業界でしょう。
今まで高額な手数料を取られていた店側が、ペイペイに流れてしまえば、その打撃は必死です。特にクレジットカードを導入できない個人商店は、QRコード決済が最適ですしね。
またペイペイは、一般ユーザー紹介するキャンペーンはありませんが、実は店舗には紹介キャンぺーンがあります。
なので、お店どうしが紹介しあえば、紹介したお店は収入にもなるし、された方も新しい顧客を獲得できる可能性が広がるわけです。
ペイペイの恩恵が弱小ブロガーにも波及
今回のペイペイの100億あげちゃうキャンペーンは、単なるバラマキではなく、日本の決済市場を大きく変えうる波及効果が高い、社会実験といえます。
実際、この波及効果の恩恵は私のような公務員ブロガーにも及びました。このペイペイというサービスは以前から知っていたので、ペイペイがリリースされる前から情報収集をして、記事を書いておりました。
その結果、アクセスが10倍以上になりました。すべて、ペイペイ関連の記事のアクセスによるものであり、PVはうなぎのぼりです。
このアクセス数の背景には、もちろんペイペイの100億バラマキがあったのはいうまでもなく、検索需要が高まっているわけですね。
このトレンドに幸いにも乗ることができたので、非常に嬉しい限りですが、私のような弱小ブロガーでもアクセス数が急上昇したのは、やはり広告代理店ではなく、口コミによる認知度向上を図ったペイペイの思惑によるものです。
私は見事に、ペイペイの描いたスキーム通りに自分のブログで宣伝して、拡散しているわけです。しかし、ペイペイは100億出すわけですが、私が出すのはブログ記事を書くための時間と労力のみです。
それゆえ、コストゼロでアクセスを集めることができたので、ペイペイもブロガーである私も互恵関係にあるというわけですね。
もちろんアクセスが増えた分、広告収入も増えたので、確定申告の必要が発生しましたし、1ヶ月の広告収入が1日で達成できたわけですから、これはブロガー業界としても、バブルといっても過言ではありません。
大手広告代理店に支払われるはずだった広告費が一般ユーザーに還元されたことによって生じた波及効果をヒシヒシと感じるところです。
仮に広告代理店が間にいて、手取り足取り代理していたら、おそらく特設サイトを開設して、そこにアクセスを集めたことでしょう。しかし、それの代わりとして、普通のブロガーがペイペイに関する解説記事やレビュー記事を投稿することで、その情報不足を補完しているわけですね。
そして、検索需要に満たすコンテンツを生み出せたブロガーは、通常よりも多くのアクセスを得られたと思います。
ということで、短期的には今回の100あげちゃうキャンペーンで得しているのは、ブロガーやアフィリエイターだったといえます。
ペイペイはソフトバンクだからできるインフラ整備事業
ペイペイは確かに中長期には、広く浅く、自動固定収入をお店から徴収するシステムを通じて、多額のキャッシュを手にするでしょう。
しかし、短期的には100億というコストを背負う必要がありますし、少なくともお店がペイペイを3年間は手数料無料で使えることから、ペイペイは少なくとも3年間は収入ほぼゼロです。
しかも、ペイペイの決済システムや営業マンの人件費が発生するわけですから、収入ゼロで固定費垂れ流して3年間持ちこたえる見通しがあるのは、ソフトバンクという大手企業だから成立するビジネスモデルなのです。
そして、短期的はペイペイが話題沸騰中で、検索需要が高まっている間は、ネットに役立つ記事を投稿するブロガーが、ページビューとそれに比例して得られる広告収入を得て、得をするわけです。
今後、100億あげちゃうキャンペーンが終わったあとに、どれほどの効果が出たのか、ペイペイ側の効果検証結果が気になるところですが、間違いなく、日本における決済スタイルを変えると思います。
クレジットカードのように、いちいち暗証番号を入力したり、サインをする手間もないし、端末の待ち時間も無いので、非常にスムーズなんですね。このスムーズさを一度味わうと元には戻れません。それだけ、ペイペイをはじめとしたQRコード決済には、魅力があるのです。
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ペイペイ自体は収入がほぼゼロでも、親会社のYahoo!は傘下のYahoo!JAPANカードの顧客数が増えることで、得しています。その理由は以下の記事で解説しています。
