札幌市職員共済組合は、札幌市役所の公務員が加入している共済組合であり、地方公務員等共済組合法に基づいて組織されています。
組合員数は、被扶養者数も含めると25,000人以上であり、巨大な共済組合組織です。
しかし、そんな巨大な共済組合である札幌市職員共済組合は共済貯金が廃止されていたことはご存知でしょうか?
そこでは、今日は札幌市職員共済組合の共済貯金が廃止された理由を調べました。
札幌市職員共済組合の基本データ
・共済名:札幌市職員共済組合
・事務所所在地:〒060-8611 札幌市中央区北1条西2丁目(札幌市役所本庁舎15階)
・電話番号:011-211-2432
・公式サイト:http://www2.city.sapporo.jp/sapporo-kyosai/・
・組合員数:13,911名
・被扶養者数:11,990名
・主な事業:①短期給付事業(いわゆる健康保険の業務)
②長期給付事業(共済年金の業務)
③福祉事業(健康診断、特定保健指導や健康づくり、貸付などの業務)
札幌市職員共済組合の福祉事業
札幌市職員共済組合が行っている福祉事業は、以下の通りです。
・普通貸付
・特別貸付
・住宅・在宅介護対応住宅貸付
・住宅貸付
・在宅介護対応住宅貸付
・災害貸付
・再任用職員貸付
・高額医療貸付
・出産貸付
・団体信用生命保険事業(団体信用生命保険と債務返済支援保険)
・インフルエンザ予防接種助成事業
・禁煙外来治療費助成事業
・歯科健康診査事業(令和元年度から新たに実施する事業です)
・宿泊補助事業の取り扱い(平成31年度~)
・他共済組合等宿泊施設の利用(相互利用制度)
以上のように、札幌市職員共済組合の福祉事業の特徴は共済貸付のメニューが豊富という点です。
一方で、市町村職員共済組合では普通に存在している共済貯金が、札幌市職員共済組合には存在していません。
実は、札幌市職員共済組合も平成28年3月末まで廃止されていたのです。
札幌市職員共済組合の共済貯金が廃止された理由
札幌市職員共済組合の共済貯金事業は、平成4年12月から開始されていたのですが、平成28年3月末で廃止されました。
その理由については、札幌市職員共済組合の共済だより(札幌きょうさい)に記述がありました。
札幌市職員共済組合の共済貯金が廃止された理由は以下のとおりです。
・共済貯金事務を受託している銀行から、共済貯金事務委託契約を平成28年3月末をもって終了すると通知があったため。
・長引く低金利により、貯金事業に係る事務費の財源である運用益を確保することが困難となったため。
・事業継続のためには新たにシステム開発費や人件費等の事務費等の捻出が困難となったため。
・法令で定められている不測の事態に備えるための「欠損補てん積立金」が確保できないため。
札幌市職員共済組合ほどの巨大な組合組織だからこそ、共済貯金の運営には、多額の経費が必要である一方で、低金利の煽りを受けて共済貯金事業の維持ができなくなったわけです。
共済貯金事業を銀行に委託していましたが、この費用については銀行側が負担していたことから、銀行側の事業見直し(コストカット)の一環で契約解除となりました。
さらに、共済貯金で義務付けられている欠損補てん積立金の確保ができなくなったのがトドメでした。
共済貯金は低金利政策で廃止リスクが高まっている
共済貯金は、あくまでも共済組合の福祉事業であり、自主財源で実施されているものであり、運用益が十分でなければ廃止されてしまいます。
共済貯金の運用先の公社債ですが、低金利政策で利息収入が得られなければ、事業継続が困難となりつつあります。
今回紹介した札幌市職員共済組合のように、共済貯金を廃止する共済組合も出てくるでしょう。
現状では、千葉県市町村共済組合のように2%近い共済貯金の利率を維持している共済組合もありますが、いつまでも続く保証はありません。

むしろ、共済組合が廃止されるリスクは、低金利政策およびマイナス金利政策で高まっているのが現実です。
共済貯金は、公務員の資産形成のメインではあるものの、今後も共済貯金に依存するのはリスキーなのかもしれません。
したがって、若手公務員ほど、ある程度のリスクを背負った資産運用を行っていく方が得策といえます。
共済貯金の廃止に備えて高まる投資リテラシーの重要性
これまでの公務員は強い雇用と安定した給与体系に守られていましたが、この優遇が年々改悪されているのが現状です。
このため、公務員も将来に向けて、株式投資といった資産運用に目を向ける必要があるでしょう。
このような資産運用に必要な「投資リテラシー」は、民間経験がない公務員こそ重要となります。
参考までに公務員向けの資産運用の参考になる書籍を紹介します。
低金利政策によって、安定した身分である公務員も、リスクを取らざるを得ないのが、低金利政策の弊害なのかもしれませんね。